オオカミの遠吠え通信

限りなくブラックに近いグレー。

携帯電話が無かった頃

それは私がまだ20代だった頃の話。
今のように携帯電話が普及していた訳じゃないから、何か連絡をしようと思えば直接自宅に電話を入れるか、はたまた勤務先に電話するしかなかった。
前者は家族に気兼ねし、後者は職場の仲間に気兼ねしたが、そういうものだと受け容れていたせいか不満に思うことはなかった。
さて、当時お付き合いをしていた人はかなり癖の強い人だった。
約束もしていないのに、突然夜中に車で迎えに来る。(当然、無視した)
職場の付き合いで帰りが遅くなるというのに、何度も何度もしつこく電話をしてくる。
極めつけは私専用の電話回線を引いてくれと言い出した。
「その必要はない」と何度も突っぱねたが、彼には理解不能だったようで、「だったら、自分が費用を出す」とまで言い出した。
恐らく相手の立場になって物事を考えることが極端に苦手なのだろう。
それも出来ないと拒絶すると、「君の両親は変わっている」と言い出した。
彼の中では「正しいのは常に自分」であり、それが受け容れられないことが理解出来なかったのだろう。
今にして思えば、かわいそうな人だった。
それにしても何故、彼は頑なに直通回線に拘ったのだろうか。
「自分にとって都合の良い時間に、気兼ねなく電話出来る」と考えていたのだろう。
しかし、実際はどうなっていただろうか。
それでなくとも頻繁にかかってくる電話に苛立っている両親だ、私が不在の時間帯は電話回線そのものを抜いておくことだろう。
私自身も束縛されることを極度に嫌う為、開通時間は仕事から戻った僅か2時間程度。
「両親が眠っている」ことを理由に、早めに回線を抜くに違いない。
その件に関して不満を募らせる可能性は高いが、その時はその時。
潔く切り捨てる形となるだろう。

私にとって救いだったのは、当時はまだ携帯電話が普及していなかったことだ。
当然、LINEのようなツールもない。
元彼のようなタイプは「自分にとって都合の良い時間」に連絡を入れてくるから、例えこちらが勤務中でもお構いなしにメッセージを送ってくる。
既読スルーなど以ての外。
なかなか既読にならないだけでも苛立つ姿が見えるようだ。
幸い、元彼の現状を知る術はない。
せめて地に足の着いた生き方をしていてくれれば良いと思うが、多分無理だろうな。(30代前半でフリーターだったので)