オオカミの遠吠え通信

限りなくブラックに近いグレー。

二度と出会うことのない香り。

新婚旅行のお土産でもらった、一本の香水。
そのボトルの美しさは言うまでもなく、ちょっと強めの香りが私には新鮮だった。
それまでシャワーコロンしか使ったことのない人間だったが、今にして思えば香りに目覚める切っ掛けはこの一本だったに違いない。
当時はバブルの絶頂期。
多くの企業が、社員旅行は海外で・・・と考えていた時期だ。
私の友人たちも香港や他の街へと飛び出していったが、悲しいかな、誰一人としてその香水を買ってくることはなかった。
免税店での取り扱いがなかったらしいのだ。
仕方なく、とある百貨店のカウンターでその香りを調達する。
「この香りは個性的な人が好むみたいよ」
販売員さんがにやりと笑ったのは気に入らないが、それでも手に入れたかった香り。
それはニナリッチの「カプリッチ」。
移り気を意味するそうだ。
どんな香り?と聞かれても、記憶は既にあいまい。
名香・「レールデュタン」ほど甘くはなく、香水初心者にも受け入れられるようなやわらかい香り。
天然香料に拘ったメーカーらしく、その香りには変な癖はなかったと記憶している。
癖はなかったとはいえ、その後発表された「ニナ」と比較すると、かなり自己主張は強かったようだ。
残念ながら既に廃番となっているので、二度とその香りを嗅ぐ機会はないだろう。
一説によれば、香料が入手できなくなったことが原因とも聞いている。
だからこそ、もう一度あの香りを体験したいと恋焦がれるのだろう。